プレミアムメーカーであるScania社は2016年から、288台のロボットをほぼ例外なく使ってカスタマイズされたトラックキャブを注文に応じて組み立てています。「プレミアムな製品はプレミアムな工場で製造されなければならないことは私には明らかなことです。」(OskarshamnのScania社でキャブ製造工場の責任者を務めるMarcus Holm) 高度なオートメーションは高品質, 良好な作業条件, 作業者に配慮した人間工学の実現につながると彼は加えます。
ロボットは固定ユニットに加工するシートメタル部品を載せて溶接します。従業員はステーションのローディングとマシンの監視のみを担当します。スウェーデンの安全衛生法により手持ちの溶接機を使うことができなくなりました。一方で溶接機器は重くて扱いにくく、また労働安全衛生ガイドラインによって放射のために溶接ガンと作業者の間に最低限の距離が必要とされます。
組立ホールから手作業による溶接作業をなくしたことでScania社は2つのメリットを得ることができました。「これによりプロセスと品質が向上します。」(OskarshamnにあるScania社のキャブボディ製造プロジェクトマネージャであるLars Kreutnerは強調します。オートメーション技術を最大限に活用するために、Scania社は従業員がロボットやオートメーション技術の使い方を学ぶトレーニングエリアを設置しました。
Scania社は総重量が16トンを超えるトラックのみを製造しています。同社は消防車やごみ収集車などの特殊車両のメーカーとして高い評価を得ています。これらのニッチ市場だけでも何十万ものバリエーションが生まれます。
「意外かもしれませんがFestoでのトラックのカスタマイズには乗用車製造の場合よりも多くの選定肢があります。」(Scania社のプレスとボディ製造のオートメーション・電子エンジニアであるEvert Forsberg) そして乗用車製造では各モデルに独自の組立ラインがあると言います。「一方、Scania社は自社が提供する全てのキャブを1つの組立ラインで組み立てています。」(Forsberg)
このように、この工場はIndustry 4.0の基本的な特性を備えています。それはカスタマイズされた車両の大量製造, 制御技術による適応機能とフレキシビリティ、診断機能、エネルギー効率と安全性のソリューションです。「全てのシステムメーカーのためのモジュール式の規格化コンセプトがあります。」Forsberg) 最終的にはシステムのオペレータは実績のあるオートメーション製品に信頼を置くことができなければなりません。またスペアパーツの在庫を不必要に増やさないことも目的としています。全てのシートメタル部品は空気圧制御式の治具にクランプされ、そこで溶接されます。「私たちは事前に構成されているCPX/VTSAタイプのFestoのバルブターミナルを意図して選定しました。」(オートメーションのエキスパートであるForsberg)「このバルブターミナルはEthernet接続やWebインタフェースから、診断、安全性、Profinet、エネルギー効率に至るまで多くの利点を提供してくれます。」
実際、バルブターミナルCPX/VTSAはProfinetへの唯一のインタフェースで追加の配線は必要ありません。バルブターミナルはオートメーションプラットフォームCPX経由で診断データを提供し、これを予知保全の観点からシステムの監視に利用することができます。「システムのコンポーネントが故障してシステム全体が麻痺する前に、システムのコンポーネントを交換することができます。」(Kreutner:プロジェクトマネージャ)
「バルブターミナルの安全コンセプトも納得のいくものでした。」(Forsberg) CPXは介入が必要になったときに、異なる圧力ゾーンを操作したり、エリアを排気したりすることができます。「移動式パネルを使って該当するシステムパーツをチェックできるのでシステム全体の不具合を草の根を分けるようにして捜しまわる必要がありません。」さらにシステム全体を起動するよりもシステムの各部を再加圧する方がはるかにエネルギー効率が高くなります。
溶接ロボットでは溶接ガンの移動やシートメタルのクランプに圧縮空気が必要です。冷却水は溶接システムを過熱から保護します。Festoは溶接ガンに圧縮空気と冷却水を供給するためのコンプリートソリューションを提供します。Scania社ではMSシリーズの空気圧調質機器を含めてこれらのソリューションをユーザーフレンドリーな方法で安全柵に統合しています。
静止溶接ガンシステム用にFestoはScania社とABB社の仕様に合うスイングアームを開発しました。このアームは150回のスポット溶接が完了した後に電極ミリング装置, いわゆるチップドレッサーを電極に送り込みます。スイングアームはステッピングモータEMMSによって駆動し、DNCEタイプの電動シリンダで正確に位置決めされて動作します。このソリューションによりFestoはサイクルタイムを半分以上短縮します。
背景:溶接ガンの電極はスポット溶接を行うと次第に鈍くなり、正確なスポット溶接を行うためには約150回のスポット溶接後にミリング加工を行う必要があります。「電極ミリング加工は先が丸くなった鉛筆を削るのと同じ原理で機能します。」(Leif Lindahl:Festo, 元Scania社担当キーアカウントマネージャ)
電極ミリング加工用のFestoの制御盤にはモーターコントローラCMMSとCPXが含まれており、CPXはProfinet経由でモーターコントローラおよび上位のロボットコントローラと通信します。「安全性についても無視できません。システムオペレータはミリング加工の後、電極をスポット溶接の正しい位置に調整するためにロボットセルに入る必要がなくなりました。」(Lindahl)
Scania社はOskarshamnで自動車製造の新しい時代を切り開いています。ほぼ完全に自動化されているだけでなく、1つの組立ラインでバッチサイズ1まで対応できるフレキシビリティを持つこの車体工場はIndustry 4.0に向けて大きく前進しています。この新しい工場を模範とした動きがあります:Scania社はブラジルのSão PauloにあるScania工場に同様の建物を建設しています。
工業都市OskarshamnはStockholmから南に300km、スウェーデンの岩礁に富む海岸に位置し、休暇を過ごす島であるGotland島やÖland島とフェリーで結ばれています。2017年には2,700人の従業員がここで全てのScaniaモデル用に様々なキャブを製造しました。Oskarshamnからは自動車搬送業者がStockholm近郊のSödertälje、オランダのZwolle、フランスのAngersにあるScania社の組立工場にキャブを運びます。そこで組み立てられて完全なトラックシャーシができあがります。
A Volkswagen Group company
151 87 Södertälje
Sweden
活動分野:大型商用車(トラックおよびバス), 船舶および産業用モータ